結婚して八年目のころ、もうひとりの子供を望んでいた僕たちに襲いかかったのは、彼女の病だった。
『大丈夫よ、すぐ元気になるから』
病室のベッドで彼女はニッコリ微笑む。
しかし、それがそんな簡単に治るものではないことを僕たちは承知していた。
けれども、僕たちはそう励まし合っていないと、心や精神が、崩壊してしまいそうな絶対の淵にいた。
『大丈夫よ、一郎さん。笑って』
薬の副作用のためから、髪が少なくなってきたが、彼女の笑顔は相変わらず、ひまわりのようだった。
しかし、日を追って小さくなっていく君を見ていられず、泣いてしまうのは僕だった。
小さな娘を抱えて、不安な夜。
付き纏うのは狂しいほどの 寂寥感。
どこまでも美しく、清らかな君は、決して弱音を履かない。
「大丈夫」「大丈夫」それは呪文のように紡がれる。



