残念御曹司の最初で最後の恋物語



彼女とは、車を走らせ、10分ほどの場所で待ち合わせていた。

今年の残暑は厳しい。暑い日差しの中、けたはたましくセミが鳴く。

僕は目的地を目指し、長らく続く坂を「はぁ、はぁ」と息を切らせながらなんとか登る。

その脇をチョロチョロと孫が走り回り、口元を緩めながら懐かしむ。

昔は僕もああやって、結と二人で結花を追ったものだ。

慣れたルート迷わず進み、やがて姿を現した彼女の前にようやく膝をついた。


「⋯⋯結、久しぶりになってしまったな」


もう、君の笑顔を見れなくなって、どのくらいの年月がすぎだろう。

お線香に火をつけて、小さな墓石の前で、みんなで手を合わせる。