残念御曹司の最初で最後の恋物語


「――パパ、パパ!」

「⋯⋯ん」


ゆっくり目を開くと、結と瓜二つの僕の宝物――結花(ゆいか)が、何やらぷりぷり怒っている。

どうやら僕は座椅子に腰掛けたまま寝ていたらしい。


「もう――! 準備終わったからって寝ないでよぉ。今から出掛けるんだから」


その隣には最近生まれた孫と娘の旦那が、準備を整え、僕が起きるのを待っていたようだ。

煌々と光るシャンデリアの光。見慣れた彼女の好きな小花柄の壁紙。

いつもの我が家だ。


⋯⋯どうやら昔の夢を見ていたらしい。


面白い夢を見たんだと、これから会う予定の彼女にも、後で教えてやろう。