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それからというものの、僕たちは毎日一緒にいた。

大学ではもちろんのこと、休日にはなんでもないデート重ね、長い休みになれば互いの家でのんびり過ごすのが当たり前となっていた。

僕が彼女を知るほど、彼女も僕を知ろうとしてくれる。育ちは全く違うけれども、それが互いを刺激しあえるいい関係だと思った。

そんな穏やかな生活をおくっているうちに、

唸るように暑い夏が過ぎ――

ほんのり人肌が恋しくなる秋が過ぎ――

そして、雪のチラつく冬がやってきた。


幸せに浸っていた僕は、こにきてようやく大切なことを思いだす――。


「日本へ帰る⋯⋯?」


その頃、実家の保有するマンションへ移り住んでいた僕の部屋で、結がコーヒーに落としていた顔を上げた。


「あぁ、もとより1年間の留学だったから。だから、来月いっぱいでこっちでの生活はおしまいなんだ」


長いと思っていた一年は、あっという間だった。

帰りたくないと思うのは、まだ結と訪れていない観光地があるからだろう。

深いことは何ひとつ考えていなかった。


だって僕は――


「――結?」


そのときだった。

カップを持ったまま固まっていた彼女の瞳から、ホロリと雫がこぼれ落ちた。

ハッと息を飲んだ。