ピン球と彼女


そっ、と彼女の震える体を抱く。

純粋な瞳から零れ落ちる、清らかな涙を、やっと受け止めることができた。

ずっと、泣かせるばかりで、何もできなかった。

ずっと傷つけた。

ピン球だった俺は、無力で、ただ、悔しいという、感情しか沸かせることができなかった。

やっと、紅葉の涙を受け止められる。

いつだって、自分の意思で紅葉の側にいられる。

紅葉を守ってやれる。

「もう、一人にしないで、っ」 

俺の胸に額を押し付け、泣きじゃくっていた紅葉が発した第一声。

震えていて、また、触れると壊れてしまいそうだった。

壊れてしまわないよう、割れないよう、優しくもう一度抱き締めた。

「ウザいくらいに、一緒にいてやる」

ニッ、と俺の性に合わないような、悪戯っぽい笑顔を向ける。

「うん」

透明な涙が、太陽の反射を受け、煌めいた。

紅葉の瞳の中には泣きそうな俺。

頬を紅葉のように火照らせた紅葉。

俺の守りたい笑顔を、やっと見せてくれた。

その笑顔に、どうも弱くて。

舞い散る紅葉に包まれながら、俺は、紅葉の唇を塞いだ。