ピン球と彼女


見慣れた校門をくぐり、見慣れた校舎を見上げる。

懐かしさに、目を細めた。

目に染みる程の眩しさを持ったブルーに、太陽に照らされ、より赤みを増した紅葉が次から次へと降り注ぐ。

その美しさに感嘆しながら、下駄箱へと足を進めた。

俺はどこのクラスになるんだろう。

どんな友達がいるのだろう。

友達はできるのだろうか。

そして、紅葉は――?

馬鹿だな、俺。

自分へ、冷笑を贈った。
 
ザッ

足音がし、前に視線を戻した。

瞬間、理性がぶっ壊れそうになり、唇を噛んだ。

「あ、……えと」

ったく、急に出てくんじゃねぇよ。

しかも、そんな表情で。

触れたら、儚く崩れてしまいそうなほど張り詰めた雰囲気。

小刻みに震えている、体。

何かを抑えているように、きつく眉根を寄せ、長い睫毛が震える。

だけど、あの、花のような笑顔だけは、何とか保っているようだった。

言っても引かれるだけなのに。

嫌われるだけなのに。

変人のレッテルを貼られるだけなのに。

我慢できなかった。

どうしても、紅葉のその表情が、俺を分かってくれてるような気がして。

「ただいま、紅葉」 

予想通り、触れるだけで、儚く、崩れていった。