お母さんは涙を流しながら、少しばかりの希望が見えたことに安堵した。
そして樹の真っ直ぐな目と、お父さんの言葉に深く頷いた。








樹は拠点の1つの近くにいた。
お父さんいわく、事務所に捉えられている可能性は少ない。だから拠点の二つのうち、さくらが去年逃げ出した時にお母さんが迎えに行ったあの道から近い方の拠点を選んだ。




17時55分

喧嘩なんて数え切れないほどしてきたのに、産まれて初めて武者振るいを覚えた樹は何度も何度も無事でいてくれと心の中で唱えていた。






そしてついにその時がきた。