私たちの高校は2年生になると修学旅行がある。
私たちの年は九州の福岡、長崎に行く事になった。
修学旅行に行く2週間前、学校で授業を受けていると目に違和感を感じた。
休み時間になると、隣の席の子に
「絢ちゃん、目が赤いけど、それって結膜炎じゃない?」
と言われ、許可を取りすぐに病院に行ったが、着く頃には両目が結膜炎になっていた。
学校に戻り、先生に報告に行くと、
「結膜炎だと人に移る可能性があるから、今日は家に帰れ。治るまでは学校には来れないな。それと今夜、俺に電話してこい」
と紙を渡された。
そこには、先生のスマホの番号が書かれていた。
夜になり、先生に電話をする。
電話の先生の声は、いつもより低かったが、嬉しそうでもあった。
「お前、電話ではやたら丁寧な話し方なんだな」
とからかわれた。
結膜炎になった事がなかったので、知らなかったが治るのにかなり時間がかかった。
それでも心配していた修学旅行にはどうにか行っていい事になった。
修学旅行当日、飛行機に乗ってみんなで福岡空港に行き。
福岡では太宰府天満宮などの観光地を回ったり、
フェリーに乗ったりと、友達と楽しい時間を過ごした。
長崎でハウステンボスに行ったり、グラバー園に行ったり、ちゃんぽんを食べたりした日、
高い所にある綺麗な夜景が一望できるホテルに泊まる事になった。
結膜炎の事があり、みんなと一緒に大浴場に入る事はダメだと先生に言われ、入浴の時間に先生の部屋のお風呂を使うようにと言われた。
同室のみんなが楽しそうに大浴場の方に向かう中、私一人先生の部屋がある階へと向かった。
その途中、いかにも酔ったおじさんが向こうから近づいて来るのが見えた。
「おおお!本当に女子高生がいた」
と大きな声で言うと、私の肩に手をのせて来た。
怖くなって、避けようとすると肩を強く掴まれた。
「離してください」
「ええ〜やだ〜」
となかなか離してくれず、私が来た方向に連れて行かれそうになった。
怖くて目を閉じた途端
いきなりおじさんが私を離した。
そしてそのままどこかに行ってしまった。
そちらの方を見ると、先生がおじさんを掴んで連れて行く所だった。
その姿を見つめているとしばらくして先生が戻って来た。
先生は何も言わずに私の手を握ると歩きだし、そのまま先生の部屋に入った。
先生がドアを閉めてこちらを見ている。
私に近づいてくると
「絢、大丈夫だったか?」
と心配そうに聞いてきた。
「はい...」
と答えた。
その時はそう思っていたからだ。
先生は
「そっか。よかった」
と言うと、部屋の中に入って行き
「ちょっと焦って、汗かいたな..。着替えるわ」
と言って、シャツを脱いだ。
すると、なぜか立っていられなくなりその場に座り込んでいた。
そんな私を見た先生は、シャツを着ないまま私の元に駆け寄って、私の肩を抱きしめた。
「絢。大丈夫だ」
なんで先生そんなに心配してるんだろうと不思議に思った私の顔は思っていたより青ざめていたようだ。
どのぐらいの時間だったか、先生は私を抱きしめていてくれた。
その時、ドアをノックする音がした。
先生はゆっくり立ち上がると近くにあったシャツを着て、ドアを開けた。
そこには他のクラスの生徒が2人立っていた。
「先生、さっき酔っ払いを退治してたでしょ〜!すっごいかっこよかった」
と、そのうちの1人がドアが開いてすぐに言っている声が聞こえた。
先生はドアを後ろ手で閉めたが、ドアが閉まる瞬間に、1人の子と目が合った。
「あれ?先生、中に誰かいるの?」
と言う声が聞こえた。
