先生からは逃げられない






絢の表情はこわばったまま、立ち尽くしていた。






連れて行かれそうになったのだから心中穏やかではなかっただろう。






そんな状態の絢を置いて、先に生徒指導室へと向かった。






絢が来るまでに窓を開け、薄いカーテンを閉めて片方の椅子に座った。






自分の想っている絢がするような事ではなかった。






絢を買い被っていたのか?






生徒指導室のドアの外に人気がある。






絢だろう。入るのを躊躇しているようだ。






俺は、ドアに近づくとドアを開けた。






絢に中に入るように促し、俺の向かいの席に座らせた。






聞きたい事は山ほどある。







俺は教師なのだから、個人的な聞き方にならないように注意しなければならない。







躊躇をしてなかなかはっきり言わない絢がもどかしくなり、絢の顎を上げ俺の顔を直視させた。






絢の話を聞いていると、また筧が関係していた。







筧に対する苛立ちが収まらなくなってきている。






『あいつは、何がしたいんだ』






その気持ちを絢にぶつけた。






絢は芯はしっかりしているが、押しに弱い。
筧の思うツボなのだ。






大学生の男達と遊んだ絢を想像して、苛立ちの他に不安も募る。







絢は自分の魅力に気づいてなさ過ぎる。






もし、相手が悪いヤツだったらと考えたら背筋がゾッとした。






教師と言う俺の立場で、個人的にできる事は限られている。






学校から離れてしまえば、守る事はほぼできないのだ。






それにしても、俺が絢に興味がある事を早い段階で女子高生に見破られてしまっていたなんて。






絢が生徒指導室を出て行った後、一人残って考えていた。






このままだったら、筧はどんどん絢を利用していくだろう。





俺の感情を揺さぶる為にだったら何だってする。






俺は絢から距離をとる事にした。







そして、それが筧の狙いだった事もわかっていた。






苛立ちと虚無感の中、外では平和そうな生徒達の話し声が聞こえる。