理由がわかった今は、絢の態度で落ち込まなくなった。





そして、よく見ていると絢の近くには決まって筧がいる事に気がついた。





筧がいない時に話かけてみた事があったが、絢の口が開き何か言いそうになった瞬間、俺の背後を見て口を閉じると気まづそうに去っていった。






絢が行った方向を見ると、そこには筧がいてこっちを見ていた。






向こうを向く瞬間、筧の表情がニヤっとした事に気づく。







まただ...






ただ俺へ向ける絢の笑顔が、ちょっとした会話が俺を満足させていたのに。






つかめたようで逃げていく。





俺の手からスッとすり抜けていく。





あの日の放課後の事を思い出していた。





絢の目は、感情が丸出しの俺を見据えていた。






そして躊躇なく自分の意見をはっきりと言ってのけた。






今思い返してみてもあの時の俺は怖かっただろう、なのにだ。






今まで見た事のなかった、芯のある強い一面を目の当たりにして、もっと興味をもってしまった。






おかげでまた、新学年が始まった頃のような乾きを感じながら毎日を過ごしている。







それでも、去年よりはマシだ。







絢を毎日見る事ができるし、彼女は俺の事を認識している。







そんなある日、学校の正門の辺りが騒々しく何かが起きている。







校内にいる生徒も外をみてガヤガヤと話していた。






気になって見てみると、そこには若い大学生ぐらいの男がいて、必死そうに周りの生徒に話しかけていた。







女子校に男が入ってきただけでも大騒ぎになるのに...







近くに誰か教師はいないのかと探していると、校舎の方からその男の方へと駆け寄って行く生徒が見えた。







絢だ。







彼女の姿を認識した瞬間、俺は駆け出した。







外へ出ると、絢がその男に手首を掴まれ、引っ張られて行こうとしている。







周りの生徒もこの一悶着を見ている、俺は怒りを抑え、男の腕を掴んだ。






そして、男の手が絢を離したと同時に間に入った。







『コイツ、絢に惚れてるのか?』







女子校にまで押しかけて来るほど好きなら、はっきり諦めさせないといけない。







「絢にもう近づくな。今度近づいたら、いろんな意味で後悔させてやるからな」






と耳元で言った。






男は自分の車の方へと走って行くと、あっという間に立ち去った。







絢が無事でよかった。






ホッとしたと同時に、絢への怒りも湧いてきた。






まずは、真相を聞かなければ。





すぐにでも問いただしたいが、ここでは目立ちすぎる、生徒指導室に来るようにと促した。