先生はクラスの子達からもあっという間に人気者になった。




どこか強引な所があるのに、みんなそれを受け入れている事が私には不思議だった。




先生の人徳なのだろうか?




先生はあの日から、教室以外で私を見かける度に話かけてきた。




そんなある日、自転車通学だった私は、家に帰ろうと自転車置き場に向かっていた。




自転車置き場は校舎の後ろ側にあり、1階にある職員室の前を通らないと行けなかった。



いつものように職員室の前が見える角を曲がると、先生が職員室の前に立っているのが見えた。





「さようなら」





と声をかけて通り過ぎようとすると





「絢!待てよ。おまえが来るの待ってたんだから」




と先生が言った。





何か用事でもあるのかと先生に近づくと、他愛もない話をしだし、その後は私への個人的な質問だった。





30分程先生と話し、その間、帰る子達にジロジロ見られ、部活に向かう子達からも嫉妬に似た目線を感じたので、





「あの...先生、用事はなんですか?」と聞くと






「えっ?用事なんてないよ。俺が絢と話したかっただけだから」と先生は言った。






「・・・・・」






この人、なんなんだろう..。
何の用事もないのにわざわざ私がここを通るのを待ってたって事?





こんな先生今まで出会ってこなかったな。





この事がきっかけで私は先生の事をもっと考える様になったのかもしれない。






そんなある日、近くの席の子としか、話していなかった私の所に、筧綾子ちゃんが話かけにきた。





「絢ちゃん!私の名前、綾子って言うの。お互いアヤちゃんだね」





とてもフレンドリーに話しかけてくれた事が嬉しかった。




「絢ちゃん、今日学校が終わったら一緒に買い物行かない?自転車通だったよね?私もなんだ」





『あれ?なんで私が自転車通学なのを知ってるのかな?』




「うん。いいよ」




疑問はあったけど、新しくできた友達と学校帰りに買い物に行くのが久しぶりだったので楽しみの方が勝り、深くは考えなかった。





綾ちゃんとの買い物は楽しかった。





その日以来、綾ちゃんは時間さえあれば私の席に来て、いろいろと話しをした。




とてもおもしろい子で、いつも私を笑わせてくれた。




そんな中、綾ちゃんから




「うちの担任ってさ、なんか嫌じゃない?私嫌いなんだよね」




と言われた。




なんと答えたらいいかよくわからず




「ああ。そうなんだ」




と言うと。




「絢ちゃんも嫌いでしょ?見ててわかるもん」




と言われた。



苦笑いをしながら彼女の方を見ると




「やっぱりそうだよね。だと思ってたんだ。これからは、二人で先生の事シカトしようよ」




と言われた。




えっ?そんな事する必要あるの?と思っても声にはならなかった。





彼女はとても押しが強く、私は押される事が多かったからだ。




それから、綾ちゃんといる時は、先生に話かけられても、ニコっとするだけになっていった。