葵ちゃんからの電話で、なんでいきなりあの子達から嫌われ出したのかがわかった。





一晩中眠れず、その事ばかりが頭の中でぐるぐる回る。





明日からどんな顔で学校に行けばいいのだろう?






綾ちゃんとこれからどうやって接したらいいのかわからない。






このまま、ずっと夜だったらよかったのにと思ってる私に無情にも朝はやってきた。







重い足取りで学校に行くと、何も知らない綾ちゃんが「おはよう」と笑顔で近づいてきた。






どうしようか昨夜いろいろ考えた、本当は学校になんか来たくなかった。



でも、ここで休んだらもう来れなくなってしまうんじゃないかと怖かった。






そして、笑顔で私を見ている綾ちゃんを前に私はいつも通り笑顔で返していた。







今の私には、彼女しかいないのだ。
まだ一人になる勇気はない。






卒業までなんとか乗り切る事だけを考えていた。






ただ、信用はもうしない。
綾ちゃんは友達ではない。






そう思うと、涙がこぼれそうになった。






私に向けてくれた笑顔や言ってくれた言葉達が脳裏をかすめ、私は頭を振って打ち消した。






綾ちゃんは不思議そうに私を見つめ、





「どうしたの?絢ちゃん、そういえば顔色少し悪いみたいだけど体調悪いの?」




と心配でもしてるように振る舞った。





私は笑顔を見せ、




「昨日、遅くまで漫画読んでたんだよね。寝不足」




と言ってごまかした。




その言葉を聞いた綾ちゃんが「そっか」と言うと同時にチャイムが鳴り自分の席へと戻っていった。





その日の授業は、何も頭に入って来なかった。





長かったような短かったような1日を過ごし、気がつくと学校は終わっていた。





その日から、自分では今までと変わらないように生活していたつもりだった。





そんな中、進路の事で面談が行われた。





行こうと思っている大学はもう、前から決めていた。





生徒指導室で一人づつ先生と面談する。



何日間にも分けられて放課後行われていた。






そして私の番になった。






ノックをして中に入ると書類に目を通している先生が座っていた。





先生と二人きりで話すのなんてどのぐらいぶりだろう。




緊張している。





私は先生の向かいの席に座った。





書類を読んでいた先生は、ゆっくりと私の方を見て、





「おお、絢の番だな」





と笑顔で言った。





そして、私の書いた進路希望の用紙を取り出して





「うん。絢の成績ならこの大学には行けるだろう。他の大学で受験しようと思っているところは?」





「前からこの大学に行きたいと思っていたので、他に受けたいと思っている大学はないんですが..」





「そっか。だったら推薦で受験したらどうだ?」





この大学しか興味のない私には推薦枠がもらえるのなら、それは願ったり叶ったりだ。




「はい。お願いします!」




と自然に笑顔になっていた。






そんな私の表情を見た先生は、少し切なそうな顔した。






「絢、お前大丈夫か?」






いきなり言われて、なんの事を話しているのかわからなかった。



自然とはお世辞にも言えない笑顔を精一杯向け、




「はい。大丈夫ですよ。どうしてですか?」




と答えたが、先生にはお見通しだったようだ。
現に、私の答えを信じている様子は全くない。





「痛々しいな。お前はどんどん笑顔が無くっなってきている。何があったんだ?話してくれ」





先生の顔は本当に心配そうで、おかしな話だが私の方がかわいそうにと同情してしまいそうになる程だった。




私は努めて明るく、大した事ではないと言う調子で、今の自分の状況、綾ちゃんとの事などを簡潔に話した。




話している最中、自分でもなんで先生に話しているんだろうと不思議であったが、もう自分だけで抱えているのが限界に来ていたのだろう。




先生は私が話している間、なにも言わず、表情も変えずにただじっと聞いていた。





そして話し終えた私に、





「そっか。辛いな。気付くのが遅くてごめんな」





と言った。





その言葉を聞いた途端、涙が後から後から流れ落ちた。





先生は私の肩に手を置くと、泣き止むまで待っていてくれた。





そして、




「絢はこの事で俺にどうして欲しい?」





と今まで聞いた事がない程の優しい声で聞いてきた。





私は、





「何もしないでください。ただ、時々でいいんで、話を聞いてもらえたら気持ちが楽になります」






と答えた。




解決法なんてないのだ。
先生が間に入れば私はひとりぼっちになってしまう。





先生は「わかった。だったらいつでも、俺のスマホに連絡しろ」と言ってくれた。





先生の手は温かく、なぜか安心感だけが私の肩に残った。