高校2年になってから、遊んだりする子は何人かいたけれど、
一番仲よかったのは、綾ちゃんだった。
一緒に遊んでいたみんなで遊園地に行ったり、カラオケに行ったり、高校の帰りに買い物やごはんに行ったりして楽しかったが、3年になってしばらくすると、何をするにも綾ちゃんとだけの時が多くなっていった。
今まで仲よかった子達の何人かは、なんだかよそよそしくなってきた感じもしていた。
ある日、みんなで話しをしていると一人の子が「美味しいアメあるからあげるね」
と言って、一つずつ渡し始めた。
何もないようにニコニコしながら手渡しして、その手が止まった時には、私の元にはアメは渡されてなかった。
意図的にやったのが、私にもわかったが何も言わなかったし、周りの子も何も言わなかった。
こんな事があるようになってからは、その子達には近づかなくなっていった。
話さなくなってからは、私に対する敵意の目が強くなって行った。
どうしてこんなに嫌われたのか、わからなかったが、私の横にはいつも綾ちゃんがいてくれた。
綾ちゃんは、いつも私を笑わせてくれたし、今までにできた事のない一番の親友だと言ってくれた。
綾ちゃんがいれば学校生活に支障もなかったし、もともと人に執着するタイプではなかったので、やり過ごしていた。
そんなある日、学校から帰宅し夕飯を食べた後に、綾ちゃんから電話があった。
「絢ちゃん、最近大丈夫?
私、全然気づかなかったんだけど、あの子達、絢ちゃんの悪口を陰でかなり言ってるんだってね」
まあ、そうなんだろうとは思っていたが、誰に言われているのかもわからなかったし、綾ちゃんからそう言われて、やはりショックだった。
「そうなんだ...」
としか、答えられなかった。
すると綾ちゃんは、
「今日、帰ろうと思ったら廊下のところで、あの子達に呼び止められて、何の話かと思ったら、『綾子ちゃんは絢ちゃんと仲いいけど、あの子ムカつかないの?うちら、前から嫌な子だなって思ってたんだよね。綾子ちゃんも絢ちゃんと仲良くするのやめて、一緒に無視しようよ。』って言われたんだ...。」
綾ちゃんは更に続けた
「でも私、あの子達が絢ちゃんの事なにか誤解しているんだと思うんだよね。だから『絢ちゃんは、いい子だよ。私の親友だし、そんな事言わないであげて』って言ってやったの!絢ちゃん、何かあったら私にすぐ言ってね。親友なんだから、絢ちゃんを悲しませるヤツは私が許さないんだから!」
と言ってくれた。
こんなに私の事を考えてくれた友達なんて今までいたのだろうか?
綾ちゃんのその気持ちが嬉しかった。
次の日学校に行くと、今まで憶測だった事が真実になった重圧を感じていた。
人の話しが、自分の事なのではないかと疑ったりして、嫌になっていった。
その日から、綾ちゃんは更にいつも私と一緒にいるようになり、
彼女達が綾ちゃんを説得しに私の悪口をまた言って来たと何度か教えられた。
その度に綾ちゃんは、私の為に怒っていた。
そんな日が続いたある日、
前に遊んでいた子の内の一人の葵ちゃんから電話があった。
彼女は、私を敵意してる子達と仲がよかったが、
彼女達が私の事をいろいろ言うようになってからは、
彼女達と少し距離を置いていた。
だからと言って、私の味方をするわけでもなく、
ただ、揉め事からは距離を置いている子だった。
彼女からの久しぶりの電話になんだか緊張した。
「もしもし、絢ちゃん」
「うん。なんか久しぶりだね」
「うん..そうだね..」
と言ったきり少しの間、沈黙があった。
何か言いづらい事なんだろうと察しがついた。
彼女が話し始めるのを待っていると、
「あのね...どうしても、黙っていられなくて...
今日、帰りに階段脇で綾子ちゃんが、あの子達に言ってるのを聞いちゃったんだけど...綾子ちゃん、絢ちゃんが、またあの子達の悪口言ってたって、告げ口してて、絢ちゃんの事、すごいムカつくんだけど、また、あの子達の悪口を言いふらすかもしれないから、仲の良いふりをしてるって言ってたよ。綾子ちゃんは、あの子達の味方だから、変な事言わないように、毎回絢ちゃんを諭してるって...でも、私には信じられくて...」
ショックだった。
しばらく何も言えなかった。
葵ちゃんには、
「話してくれてありがとう。あと信じてくれてありがとうね」
と言って電話を切った。
綾ちゃんは私に言っている事を、あの子達にも同じように言ってたんだ。
今回の発端、元凶は全て綾ちゃんだったなんて...
私を孤立させる事が目的。
綾ちゃん以外頼れないように...
