バレたら家族がバラバラになってしまう。子供の事は宝だと思っている。

そうパパは言っていた。

サクの1日はこのウサギ小屋で始まる。窮屈だ、しかしそれも仕方ない。兄たちは外で遊んでいる、とても楽しそうだ。サクも出たい。しかしそれは叶わない。羨ましそうに見つめる事しか出来なかった。

出してと伝えても叩かれるだけだった。伝える手段も持たない。でも1日に一回はここから出してもらえる。それは楽しくてたまらない。皆大好きだ。楽しい。楽しい。楽しい。そう思っている。全く偽りは無く楽しい日々。
サクにとっては両親は神である。それはほとんどの子供にとってもそうだろう。子にとって親は神。世界の全てはこの部屋。井の中の蛙。そんな難しい物では無い。シンプルなものだ真白の画用紙。純粋無垢なのである。何も知らない。でも誰もが通った道だが、理解するのは難しい。いや理解してはいけないのだ。しかしこの現代現実にある世界なのだ。サクは何も知らず幸せのまま死んだ。

それは誰のせいなのだろう、神のせいなのだろうか、解らない。

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しかし父であるマコトも悲惨な生い立ちだった。

マコトの母親はモンスターと呼ばれていた。風貌や性格それは全てモンスターというのがまさに的を得ていた。モンスターは中学卒業後には水商売を始めて、マコトを含めて5人の子供をもうけた。ただ子育ては全くせずに子供達は乳児園に入れられていた。マコト自身幼少期の母との思い出はほとんど無かった。子供の中には出生届が出されていない子供もいた。
「母はいない、本当の母は別にいる、きっと本当の母親は優しい人だ」
とマコトの幼少期は妄想していた。モンスターは子供が施設からもらうお小遣いを取り上げて子供たちを児童養護施設に押し付けていた。
「ほら、それをよこしな」
「はい」