シンデレラは、ここにいます。〜オレの推しの推し〜


憂がポケットからガラスを出して

オレを見た



「謙士が見える…」



「見んな…」



ハァ…ハァ…ハァ…ハァ…



「なんで…別にいいじゃん!」



「憂は、帰ってじょーくん見てろ!」



「謙士がいっぱいいる…」



また憂が笑った


かわいいな…ってエクボを見てしまう



ハァ…ハァ…ハァ…



オレの呼吸と

憂の笑い声が混じり合う



「オレにも見せて…」



憂の手からガラスを取った


ガラスを通して憂を覗いた



「アレ…憂、いっぱい見えないけど…

大きい憂がひとり見える…」



「うん…だって…
すぐ近くにいるから…」



「え?」



目からガラスを外したら

憂がすぐ前にいた



ドクン…



近いだろ!

さっきより近い



「なにしてんの?憂」



ドクン…



「謙士の近くにいる」



ドクン…



「うん、それはわかる」





相手間違えてない?



憂が見たいのは

オレじゃなくて



憂が近くにいたいのは

オレじゃなくて



憂の目の前にいてほしいのは

オレじゃなくて



じょーくんだろ



「憂…」



ドキドキ…

ドキドキ…



「ん?」



憂がオレを見てる



ドキドキ…



ふたりの間にガラスはない



オレは目を伏せた



憂がキラキラしてて

ドキドキして



「オレ
じょーくんじゃないから…」



憂に背を向けた



「うん、わかってるよ」



「帰ってじょーくん見なよ」



また振り返って

憂にガラスを返した



憂は黙って受け取って

起き上がった



「うん、帰る…」



憂の声がしなくなった



憂はやっぱり

じょーくんが好きなんだ



勘違いとか

期待とか

する方が悪い



憂がいた背中が

急に冷たく感じた