「あっつ〜…」
北海道の夏。
本州の人からしたらどうってことないのだろう。
道民からすると地獄だ。
それに、私は焼けない体質で肌がすごく白い。
少しは焼けたいんだけど全く焼けなくて、ただ暑いだけの夏が本当に嫌いだ。
「お先失礼しまーす!」
「おつかれ〜〜」
自宅から徒歩10分のカフェ。
夏休み、バイト漬けの日々を送っている。
私、吉沢 歩。
高校3年生。
なんで夏休みにずっとバイトしてるかって?
それは、私は強く生きるって決めたから。
親がいない私は養護施設で育った。
私が物心つく前に、両親は亡くなった。
親の顔も、名前も知らされていない。
いや、あえて聞いていない。
いない親の顔を見ても、名前を聞いても、ただ自分を苦しめるだけだ。