それから数週間後、教室で朱里と李津が一緒にお昼ご飯を食べていた。

「またあの二人一緒に居るね。いいの?」

 朱里に季津が何気なく、片手に焼きそばパンを持ちながら問いかける。視線は窓の外に向けられており、朱里も同じ所を見た。庭には、最近一緒にいる事が多い青夏と江梨花が仲睦ましそうにお昼ご飯を広げている。角度的に彼女の笑顔しか見えないが、それでも多としそうな雰囲気は感じ取れる。
 
「先輩達って付き合ってんのかな……」
「そういう情報はあんたの方が詳しいじゃない。聞いてみたら?」
「聞けないよぉ……。もし付き合ってるって聞いたら立ち直れる気しないもん」
「でも、気になるんでしょ?」
「うっ、うん……」

 視線を落とし小さく頷く。その様子を李津は呆れ顔で見ていた。

「噂ではもう広まってるよねぇ。お似合いのカップルだってさ。まぁ、二人は美男美女だよね。見た目だけなら」
「うっ……」

 季津の追い打ちに朱里は項垂れるように机に突っ伏してしまった。

「諦めるの?」

 意気消沈している彼女に対して、気にする様子を見せない季津はいつもの口調で聞いた。その問いには数秒の間があり、朱里はゆっくりと顔を上げ視線を落としながらも思いが口から零れ落ちる。

「諦めたくない……」
「だったら頑張りなさいよ。あんたの唯一の長所は諦めの悪さでしょ」
「えっ、唯一なの?」
「そういう事だから、パクッ。らんふぉはひなはい」
「話してる途中で食べないでよ……」

 その後はお互い雑談をして、その日の昼休みは終わった。