放課後になり、麗は昼休みの事など気にせず秋に近付きながら明るい声で話しかける。

「秋、話の続きだけどね! 明日行ってみない?」
「──え?」

 開口一発目でいきなりそんなことを言われたため、秋はすぐ理解できなかった。
 鞄に教科書などを詰めていたのだが、麗に話しかけられ動きを止める。何の話と言いたげに、笑顔で声をかけてきた麗を見た。
 表情から察した麗は、少し怒ったように頬を膨らませ、文句を言うように昼休みの時の話を伝えた。

「もう。噂の、箱を開けてくれるって話だよ! 昼休み話してたじゃん!」
「あ、噂の話か」
「しっかりしてよ。それで、今日は部活があるから無理だけど、明日なら休みでしょ!? 行けるじゃん」

 あぁ、と。噂の事なんてすっかり頭から抜けていた秋は、誤魔化すように苦笑いを浮かべ麗を見返す。

「えっと。噂の所に行くと言っても、開けられない箱なんてあるの?」
「いいじゃん適当で。何か鍵がかかってる箱でも持っていけばいいんじゃない?」
「そんな適当な……」

 麗の言葉に秋は溜息をつき「わかった」と一言答えた。その返事に麗は笑顔で大きく頷く。
 
「何を言っても聞く気ないらしいしね……。まぁ、噂がどんな感じなのかも気にな──」
「絶対に美男子に会ってやるんだから!」
「私の声、遮らないでくれないかな」

 「もう!」と怒りながら、秋は麗の後ろ姿をついていく。肩にかけている鞄の持ち手を強く、握りながら……。