数日はこのような事が続き、秋の心は壊れる寸前だった。誰とも話す事はなく、必要最低限の会話しかしていない。そんなある日、突然体育館に巴の悲鳴が響いた。

「きゃぁ!!」
「巴?!」
「大丈夫?!」

 その声は何かに驚き上げた物。声の後には、何かが落ちた音まで聞こえ部員達は一斉に振り向く。そこには、顔を歪め左足を抑え蹲っている巴の姿。

「いた。たた……」
「佐々木さん! どうしたんですか?!」

 顧問が驚きの声と共に、巴へと駆け寄り抑えていた左足に確認するようそっと触れた。

「いっ! 痛いです!」
「……腫れていますね。骨は大丈夫そうですけど、これでは試合は無理ですね」

 顧問が左足に触れると、巴は痛みで咄嗟に声を上げる。顧問は眉間に皺を寄せ、部員達は顔を青くしてしまう。

「だっ、大丈夫です! 私はまだこれくらい!」

 巴は周りを見回し、慌てて立ち上がろうとするもやはり痛むのかそのまま倒れてしまった。

「佐々木さん?! 無理はダメです! とりあえず今日の練習はここまでにして病院に行きましょう」

 顧問は慌てて巴に言い、肩を貸し歩き出した。
 巴は悔しさと痛み、悲しみと怒り。その他、様々な感情が入り交じった顔を浮かべ歩き出すのだが、その顔はいきなりドア付近に立っていた秋の方に向けられる。そう思った次の瞬間、鼓膜が破れそうなほど大きな声で怒鳴りつけた。