記憶ゲーム

しかし、私の言葉に妻は声を出さずに泣いた。


それこそ桜の花びらが散るようにはらはらと。


「そうじゃないの。私じゃないの」


と、左右に首を振る。


「じゃあ、誰を病院に連れて行くんだ?」


聞くと、妻は意を決したように私を見た。


その真っ直ぐな目に吸い込まれてしまいそうになる。


私はそんな真っ直ぐな妻に惹かれたのだと思い出した。


「あなたよ」


「私……?」


私は目を見開き、自分で自分を指差した。


相当に間抜けな様子だったと思うが、妻は一切笑わなかった。


「あなたは少し治療が必要だと思うの」


いいにくそうな言葉を、妻は容赦なくあたしへ向ける。


「それは、どうして?」


「アキナが死んでからもう3ヶ月よ」


その言葉は一瞬私の胸に突き刺さった。


もう3ヶ月。


私にとってはまだ3ヶ月だ。


むしろ、そんなに時間が経過していたことに驚いた。


「それと、私の病院と何の関係が?」


「あなた、今でもまだアキナを探して外に出て行くでしょう? そういうの、見ていて辛いの」