規制アプリ

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帰宅後、あたしはすぐにお風呂場へ向かって上履きを洗い始めた。


こんなのとても両親には見せられないものだった。


油性マジックで書かれた悪口はなかなか落とすことができずに苦戦する。


それでもどうにか綺麗になったタイミングで、母親が買い物から帰ってきた。


「あら亜里沙、上履きは買ったばかりなのに、もう汚れたの?」


ドライヤーで上履きを乾かしているあたしを見て、そう声をかけてくる母親。


「うん。今日は避難訓練があったから、上履きのままグラウンドに出たの」


「あら、そうだったの」


適当な嘘を鵜呑みにしてうなづいている母親。


一瞬、母親を騙しているという痛みが胸に走った。


「転校先の学校はどう?」


「みんな優しいよ」


あたしは笑顔で返事をした。


「そう。それならよかった。亜里沙が急に高校を変わりたいなんていうから、お母さんもお父さんもビックリしたんだからね」


「えへへ。ごめんね。どうしても今の学校でやりたいことがあったの」


あたしは上履きから視線を移動せずに答える。


すべて、質問されたときのために準備した返事だった。


だけど、今の学校でやりたいことがあるというのは、嘘じゃなかった。


「亜里沙の人生は亜里沙のものだから、頑張りなさい」


母親はそう言うと、今買ってきたものを片付けるために、キッチンへと戻って行ったのだった。