「その遺書があれば俺たちが復讐することができたのに!」


伊代の父親が馬乗りになってきた。


必死で逃げようとするが、すでに体力がない上に男の人に押さえつけられてはひとたまりもない。


あたしは伊代の父親の下でもがくばかりだ。


「第一発見者のあんたのことはずっと怪しいと思って、行動を監視させてもらっていたわ」


伊代の母親はそう言うと、あたしのポケットからスマホを取り出した。


「それはっ!」


「このアプリは私たち夫婦に送られるべきものだったのに! お前が横取りしたんだ!」


スマホを地面に投げつけ、それを踏みつける。


バキッと音が響いて画面が割れた。


「お前にはわからないだろう。俺たちがどれだけ自分の手であいつらを殺したかったか……!」


「で、でもあたしだって伊代の復讐がしたくて!!」


必死に訴えてもダメだった。


子供を自殺に追いやられた親の気持ちは、あたしなんかよりも更に深く憎しみを持っている。


あたしがなにを言おうと、この人たちには聞こえない。


「この廃墟は誰も来ないのよ。まぁ、知っていると思うけど」


伊代の母親がニンマリと笑みを浮かべ、あたしへ向けてそう言ったのだった。




END