「うぅ……ごめん……なさい」


今更謝っても遅い。


それに、謝罪はあたしではなく伊代に言うべきだ。


あたしは知らない間に口元に笑みを浮かべていた。


そして壊れた人形のように樹里を殴り続ける。


その音だけが静かな廃墟に無限に響き割っていく。


「ふふっ……あはははははっ!」


気がつけば外はオレンジ色に染まっていて、夕方を告げるチャイムが聞こえてきていた。


手を止めて樹里を見下ろす。


その顔は真っ赤に染まり、鼻は陥没し、目はつぶれていた。


いつの間に死んだのだろう。


そんなことにも気がつかなかった。