「だって」と坂口くんが口を開いた。

「一年目で選ばれるとは思わなかったし」

そう言って口を尖らせる。

「普通、三年目の先輩たちからかなと思って、ダメ元で言ったら通っちゃいました」

知らないよ。

私の表情を気にしながら、続けて口を開く。

「あとは、岡本さんとこうなるって思わなかったし」

私はゆっくり坂口を見る。
坂口くんがまっすぐ私を見る。

「離れたくないって思う人が、東京でできるなんて思ってなかったし」

知らないよ。

坂口くんがゆっくり顔を近付けてきた。

不毛。

なぜか私たちはキスをする。

「岡本さん、俺のこと好きですか」

唇が離れて、坂口くんが聞いてくる。

「好きだよ」

私は初めて言った。

そしてもう一回キスをした。

終わりが見えてるのに、愛し合うのは何故なんだろう。