「なんか、なんか、おかしいかもしれないんですけど」

突然ドラマの最中に、坂口くんがクッションをグッとお腹に潰しながら口を開いた。

「ん?」

私はテレビ画面から坂口くんに視線を移す。

「最近、岡本さんが女にしか見えないんですよね」

坂口くんが真顔で言う。

「ずっと女なんだけど」

私が低音で答える。

「そういうんじゃなくて。だって俺と岡本さん、6個離れてるんですよ?」
「知ってる」
「6ですよ?小学校かぶってないんですよ?中学生と大学生ですよ?」
「そうだね」
「それってすごくないですか?」

坂口くんがピュアな目を私に向ける。

「え、私の年齢の話?今」

私が聞くと、「俺、タメか年下としか付き合ったことないんですもん」とクッションの角についてるタッセルの糸を指に絡めてクルクルする。

「だから何なの」

坂口くんがクッションから私に目を向ける。
相変わらずタッセルはクルクル回されてる。

「どうしたらいいんですか」
「はい?」
「俺のことどう見てます?」

ジッと私を見る目。
考えたことがない。

「大学出たばかりの子」

私は素直に答えた。
嘘偽りのない、そのままの気持ちを。

ふと、この間の坂口くんの腕の力強さを思い出す。

あの時は例外だ。

いつもは、ただの新卒の子だし。

「それって、子ども、みたいな?」
「んー、子どもっていうか、若いっていうか」

少し間が空く。
坂口くんがうなだれるように「ですよねえ」と呟く。

「さっきから何なの?」

私が坂口くんに体制を向ける。