ミクは拓哉とやり直す決心をした。
ミクの狭いマンションと拓哉のバカでかいタワマンを行ったり来たりの生活が始まった。
普通の生活をしながら金曜日の夜
から日曜日迄拓哉とミクは一緒に
過ごした。
もう食べられ無いと諦めていた
ミクの手の込んだビーフシチューを一口たべた拓哉の目からは
涙が止まらなかった。
「拓哉、大好物だったのは、
知ってるけど、そんな泣かないでよ!・・・」
「うん、うん。」
頷きながら拓哉は泣いていた。
フォークとナイフで肉を切り
フォークに刺して口に入れると
ホロホロと肉が柔ら
かく崩れていく。
野菜をタップリ煮込んだルーは
拓哉の辛かった日々を
溶かして行った。
きっと拓哉が、ずっと夢見たミクの味だったのだろう。
それから拓哉は独身な事もあり
沢山の女性が寄り着いて、誘って
来たが揺らぐ事は無かった。
同僚との飲み会も酒はあまり飲まず会社の飲み会も、3時間くらいで切り上げた。
帰りには必ずミクの家に寄り
ミクもそんな拓哉を待つ事が普通になっていた。
籍を入れない事がミクに取って予防策になっていたのかも知れない。
完全に拓哉のモノにはならない
そこが拓哉を不安にさせていた。
それくらい危機感を持っ方が
浮気常習犯だった拓哉には丁度
いいのだろう。
入籍しないままミクは妊娠した。
そして待望の子供が生まれた。
拓哉は認知して、養育費払うと
言うがミクはあくまで自分1人の
子供と言い張った。
それには理由があった。
子供が小学校に上がる迄は拓哉へのお仕置としてこうして置こうと
決めていた事もある
それにミクにはどうしても納得
出来ない事が、もうひとつあった。
「ママ、パパのマンションに
行ってくる。
おばあちゃんと曾おばあちゃんが来てるっ・・て。」
今年3歳になる双子の娘達は急いで父親のいるマンションへ走りだした。
くるりと丸い目をした弥音
(ミオン)
少し切れ長の涼しい目をした
花音(かおん)
2人は不思議な双子だった。
弥音は拓哉に良く似ていて
花音は何故か勝成に良く似ている。
拓哉との人生を選んだミクには
その事が分からない。
勝成とやり直した日が一回目も5月4日拓哉とやり直した二回目も5月4日に始まっている。
ミクはその日、5月4日に2人と関係している事になる。
つまりミクは勝成の子を身ごもったまま同じ日に拓哉の子供を身ごもった事になる。
これぞ神のなせる技。
勝成も拓哉も愛していたのは
変わりがない。
どちらの子供にしても愛情に、
変わりがない。
ミクに選ばれた十字架の
その不思議な事実を確かめる術は
見つからなかった。
拓哉と、娘達のDNA検査をしても
ちゃんと2人とも拓哉の娘なのだ。
この事は誰も知らない。
この不思議な事実をミクすら
理解出来ない。
何も知らない拓哉は2人を分け隔て無く愛してくれている。
化学では解明されない事が・・・
あっても不思議では無い。
あの日5月5日、拓哉は海へ行き自分の体を回収して来た。
同じ時間に海へ入り自分の体を見つけ浮き上がって来た。
ずぶ濡れの体を拭きミクを連れて
我が家へと帰り着いた。
拓哉の娘であろうが
勝成の娘であろうが
ミクの産んだ娘には違いない。
そして何よりそれ以外は
仕草もなにもかもミクにそっくりなのだ。
その事が一番愛される理由だろう。
お爺さんはそんな家族を
見つめながら、たまにや儂も失敗もあるよのう!
宿った命を消す事は、神の使いの
ワシには、出来んのじゃ。
ケタケタと笑いながら
曲がった背中をピンと伸ばし
「今回は長居しすぎたようじゃ。」
拓哉とミクの仲睦ましい姿を
見届けるとグルリと回りを見回し
「今度来るのは何千年後かのう。」
そう呟くと白い杖を振り回し
台風でも来たかのような突風が吹き
渦を巻き上げ、地上から天高く伸びる渦を音を立てながら激しく、
くねらせ上昇する。
まるで本物のような
シルバーの龍は、勢いよく薄桃色の
飛沫を飛ばしながら・・・
地上から巻き上がる風は一本線を
真っ直ぐに引いたように上に上に
昇って行き、方向を変え拓哉とミクのマンションの上を🔄🔄🔄と回り
パラパラパラパラと、静かに消え
て行った。
フオッフオッフオーフオッフオフォ
お爺さん特有の雄叫びは風の
音の様に日本中に響いた。
地上にはボロボロの服と、帽子
がキチンと畳まれて
龍神様の祠の前に置かれていた。
又くるからのう━━━━━━━━
フオッフオッフオ フオッフオッフオ フオッフオフォ
お爺さんが天に昇ると
パラパラパラパラとボロボロの服は
ダイヤモンドダストの様に
キラキラキラと輝きながら消えて
何も無かった様に祠だけが
残っていた。
お爺さんは何処へ昇って行ったの
だろうか?
海で何をしていたのだろうか?
彼はキューピットなのかも知れない。
だから拓哉の泣き叫ぶ声に
知らぬ振りが出来なかったの
だろうか?
そして悲しむ人が出ないように
最善の配慮をしてこの地を去って
行ったのだろう。
彼が言ったように、彼に会える人は滅多に居なく彼に会った人は
幸せにならなければならない。
そうしないとお爺さんは
天に帰れなくなるそうだから・・・
祠の中の風の音がビューンとした後
フオッフオッフオフオッフオフォ
と、音がしていた。
お終い。
ミクの狭いマンションと拓哉のバカでかいタワマンを行ったり来たりの生活が始まった。
普通の生活をしながら金曜日の夜
から日曜日迄拓哉とミクは一緒に
過ごした。
もう食べられ無いと諦めていた
ミクの手の込んだビーフシチューを一口たべた拓哉の目からは
涙が止まらなかった。
「拓哉、大好物だったのは、
知ってるけど、そんな泣かないでよ!・・・」
「うん、うん。」
頷きながら拓哉は泣いていた。
フォークとナイフで肉を切り
フォークに刺して口に入れると
ホロホロと肉が柔ら
かく崩れていく。
野菜をタップリ煮込んだルーは
拓哉の辛かった日々を
溶かして行った。
きっと拓哉が、ずっと夢見たミクの味だったのだろう。
それから拓哉は独身な事もあり
沢山の女性が寄り着いて、誘って
来たが揺らぐ事は無かった。
同僚との飲み会も酒はあまり飲まず会社の飲み会も、3時間くらいで切り上げた。
帰りには必ずミクの家に寄り
ミクもそんな拓哉を待つ事が普通になっていた。
籍を入れない事がミクに取って予防策になっていたのかも知れない。
完全に拓哉のモノにはならない
そこが拓哉を不安にさせていた。
それくらい危機感を持っ方が
浮気常習犯だった拓哉には丁度
いいのだろう。
入籍しないままミクは妊娠した。
そして待望の子供が生まれた。
拓哉は認知して、養育費払うと
言うがミクはあくまで自分1人の
子供と言い張った。
それには理由があった。
子供が小学校に上がる迄は拓哉へのお仕置としてこうして置こうと
決めていた事もある
それにミクにはどうしても納得
出来ない事が、もうひとつあった。
「ママ、パパのマンションに
行ってくる。
おばあちゃんと曾おばあちゃんが来てるっ・・て。」
今年3歳になる双子の娘達は急いで父親のいるマンションへ走りだした。
くるりと丸い目をした弥音
(ミオン)
少し切れ長の涼しい目をした
花音(かおん)
2人は不思議な双子だった。
弥音は拓哉に良く似ていて
花音は何故か勝成に良く似ている。
拓哉との人生を選んだミクには
その事が分からない。
勝成とやり直した日が一回目も5月4日拓哉とやり直した二回目も5月4日に始まっている。
ミクはその日、5月4日に2人と関係している事になる。
つまりミクは勝成の子を身ごもったまま同じ日に拓哉の子供を身ごもった事になる。
これぞ神のなせる技。
勝成も拓哉も愛していたのは
変わりがない。
どちらの子供にしても愛情に、
変わりがない。
ミクに選ばれた十字架の
その不思議な事実を確かめる術は
見つからなかった。
拓哉と、娘達のDNA検査をしても
ちゃんと2人とも拓哉の娘なのだ。
この事は誰も知らない。
この不思議な事実をミクすら
理解出来ない。
何も知らない拓哉は2人を分け隔て無く愛してくれている。
化学では解明されない事が・・・
あっても不思議では無い。
あの日5月5日、拓哉は海へ行き自分の体を回収して来た。
同じ時間に海へ入り自分の体を見つけ浮き上がって来た。
ずぶ濡れの体を拭きミクを連れて
我が家へと帰り着いた。
拓哉の娘であろうが
勝成の娘であろうが
ミクの産んだ娘には違いない。
そして何よりそれ以外は
仕草もなにもかもミクにそっくりなのだ。
その事が一番愛される理由だろう。
お爺さんはそんな家族を
見つめながら、たまにや儂も失敗もあるよのう!
宿った命を消す事は、神の使いの
ワシには、出来んのじゃ。
ケタケタと笑いながら
曲がった背中をピンと伸ばし
「今回は長居しすぎたようじゃ。」
拓哉とミクの仲睦ましい姿を
見届けるとグルリと回りを見回し
「今度来るのは何千年後かのう。」
そう呟くと白い杖を振り回し
台風でも来たかのような突風が吹き
渦を巻き上げ、地上から天高く伸びる渦を音を立てながら激しく、
くねらせ上昇する。
まるで本物のような
シルバーの龍は、勢いよく薄桃色の
飛沫を飛ばしながら・・・
地上から巻き上がる風は一本線を
真っ直ぐに引いたように上に上に
昇って行き、方向を変え拓哉とミクのマンションの上を🔄🔄🔄と回り
パラパラパラパラと、静かに消え
て行った。
フオッフオッフオーフオッフオフォ
お爺さん特有の雄叫びは風の
音の様に日本中に響いた。
地上にはボロボロの服と、帽子
がキチンと畳まれて
龍神様の祠の前に置かれていた。
又くるからのう━━━━━━━━
フオッフオッフオ フオッフオッフオ フオッフオフォ
お爺さんが天に昇ると
パラパラパラパラとボロボロの服は
ダイヤモンドダストの様に
キラキラキラと輝きながら消えて
何も無かった様に祠だけが
残っていた。
お爺さんは何処へ昇って行ったの
だろうか?
海で何をしていたのだろうか?
彼はキューピットなのかも知れない。
だから拓哉の泣き叫ぶ声に
知らぬ振りが出来なかったの
だろうか?
そして悲しむ人が出ないように
最善の配慮をしてこの地を去って
行ったのだろう。
彼が言ったように、彼に会える人は滅多に居なく彼に会った人は
幸せにならなければならない。
そうしないとお爺さんは
天に帰れなくなるそうだから・・・
祠の中の風の音がビューンとした後
フオッフオッフオフオッフオフォ
と、音がしていた。
お終い。



