「やっぱり、最初は王道な魚からだよな」

入口付近にある巨大な水槽前。海斗は入口でもらったパンフレットを片手に、良く見かける魚が泳いでる水槽を眺めた。

「かわいい……」

海斗は、柵から身を乗り出して水槽に顔をぐっと近づけて目を輝かせる。子どもみたいで、何だかかわいい。

「……次行こう!時間あったら、また来よ!先に、全部回らないと……!」

私は、海斗の腕を引っ張った。周りの目線なんて、気にしない。こうでもしないと、なかなか離れないんだもん!それは、私も一緒なんだけど……。

ほら、顔見知りの職員さん……呆れた顔してる!

「ご、ごめん……次は、どこ行く?」

パンフレットを広げながら、海斗は微笑む。

「……パンフレットを広げなくても、場所なんて分かってるでしょ?私、サメが見たい!深海魚も良いかも」

私と海斗はこの水族館に何十回と来てるから、どこに何があるか、なんて把握してる。

「……サメと深海魚か……奥の方だね。この近くだと……クラゲかな?」

「そうだね。じゃあ、行こう!」

私と海斗は、クラゲが泳いでる水槽へと向かった。

クラゲは、のんびりと水中を漂ってる。

「良いなぁ……私もクラゲになりたい……」

私が呟くと、海斗は苦笑した。