彼女を止めるために
私も後を追い掛けて走り出した。
美南さんの控え室があるのは
レッスン室のすぐ上の階。
エレベーターを待たず
非常用階段を駆け上がる彼女のスピードは
ピンヒールなのに結構早い。
部屋のすぐ近くまで追いついた頃には
室内の火の勢いは増しているらしく
開いたドアから煙が漏れ始めていた。
「危ないから離れて!」
「すぐに逃げて!」
近付かないようにと男性社員2人が
他の人達を誘導している。
「私の衣装が…メイク道具も…
大切なものが全部あるのに…」
「行っちゃダメッ!美南さんッ」
何かに引っ張られるように歩き出す彼女の前を塞いで、止めようとしたけれど…
「貴方にはわからない。
私の気持ちなんて、わかるワケない!」
「美南さん…」
涙を見せる彼女に何も言い返せない。
プロ意識のある人達の想いに
私みたいな素人が口を出していいはずがないから。
それでも…
「命には変えられない。
貴方に怪我をさせたくないの。
だからここで待っていて」
それだけ伝えて
私は走った―――



