仕事だけじゃなくて
住む家まで美南さんが関わってくるとは
複雑すぎて先行き不安しか感じないんですが。
「美南のために買った部屋って事に
躊躇してる?」
「そりゃぁ…まぁ」
恋人のために懸けたお金は
金額だけじゃなくて重みを感じるし。
「まぁ俺も他の人になら貸すつもりはないけど。
でも由凪さんは…別、かな」
「別?」
「…まぁ、いいじゃん。
細かい事は気にしないで使って?
美南が使う予定で買ったけど
結局のところ一度も住んではいないんだし」
そう言われても
良いのか悪いのか『じゃぁ喜んで』とも言い難い。
不安げに動かない私を見た然さん。
「本当の理由はね…」
と、言いながら一度ドアを閉めると
ゆっくり私に近付く。
「由凪さんは”ちゃんと”してそうだから。
無理も無茶も言わない気がする…」
「え…?」
「要は、俺が貴方の傍にいたいって事。
それが理由なら、受け入れてくれる?」
優しい瞳と頬に触れる温かい指先に
心臓がドキッとする。
この人は
いつもズルイ…―――