片付けを始めるスタッフに挨拶をし
私は然さんの後をついて行く形で出口のドアまで進むと、腕を組み壁に寄り掛かる美南さんを見掛けた。
一瞬、目が合った気がして頭を下げたけれど
彼女は何も応えず、それどころか冷え切った鋭い目つきでこちらを睨んで見える。
気のせい?…じゃないよね。
「由凪さん
気にせずそのまま進んで。」
「え、でも…」
「いいから。」
足を止めようとする私に
彼は小声で耳打ちしてきたけれど…
無視するみたいで気が引けた。
たぶんだけど
然さんも彼女の表情に気付いたのかもしれない。
どことなく険しく見える彼の目が”本音”を物語っているから。
この場は黙って従ったほうがいいんだろう。
「わかりました」
美南さんに悟られないように私は小さく頷き
彼女とすれ違う際に軽く頭を下げて部屋を後にした。
これで本当に良かったかは
嫌な予感しかしない―――
「然、ちょっといいかな」
彼と一緒に部屋を出た私達だったけど
もちろん美南さんは見過ごすはずもなく
低い声で呼び止める。