勢いで乗り込んでみたものの
行き先なんて決めてない。

「何階に行きます?」

と、聞かれても
何階に何があるのか全く知らないのだから
困ってしまう。

だから思わず。

「お、同じ階で!」

この女性が押したであろう6階のランプを見て
ひとまず同じ階で降りてみようと安易に考え答えてみたけど。
そんな私の反応に彼女は不思議そうな表情を浮かべつつ、庫内で2人きり。

端っこで緊張しながら立っている私と
表示板側の壁に寄り掛かりスマホを弄る彼女。

なぜか気まずい…

それにこの人、どこかで見た気がする。
どこだったかなぁ…


バレないようにチラチラ横目で見ると
マスクで顔の半分までしか見えないけれど
綺麗な二重瞼に、まつ毛はしっかりと上を向き
肩より少し長く鎖骨まで届かない茶髪は軽くウェーブが掛かっていて。

確かこの女性は…

誰だったか思い出そうと頭を捻って考えている私に。

「あのぉ…
 あなたは…?」

小声で質問してくる彼女。

「わ、私ですか?」

コクコクと首を縦に振る女性。