「ちちちちち違いますッ」

慌てふためきながら返答してしまったが
完全に勘違いしていた事はバレたくない。

元はと言えば
《《俺のマンション》》とか言って複雑化させた然さんが悪いのよ。
”俺の住むマンションの《《隣の部屋》》”って
ちゃんと説明すれば私としてもこんなにドキドキする事は…

ドキドキ…したの?私。
なぜ?

「契約書についての説明は
 ざっとこんな感じ。
 あとは家で書いてきてね」

数枚の書類をトントンと揃え
大きめの封筒に入れて手渡してくれたけど
契約の説明ってよりプライベートを聞かれただけな気がする。

一方的すぎる然さんに振り回されっぱなしの私は
どうしても彼に聞いておきたかった。

「私にここまでしてくれるのは…どうしてです?」

「ん?」

「素質があると見込んでくれて
 挑戦させてもらえる事には感謝します。
 けれど…キスした理由もわからないし
 部屋を提供してくれたりと、そこまでするのは
 引き受けてしまった責任があるから?」

仕事の立場上
そうしないといけない責任があるからだと思っていた。