この人とは
今日初めて会ったばかりなのに。

それなのに、凄く不思議。
話を聞いてもらいたくなった私がいる。

「憧れが…少しあったんです。
 こんな私でも変わる事が出来るのかなって
 だから化粧品の会社で
 (もと)から勉強したいなって入社したんです」

全部を話し終えてしまったけど
彼は笑顔で『うん、うん』と頷いてくれている。

「あ、すみません、こんな話ッ
 迷惑でしたよねッ」

身の上話なんてしてしまい
急に恥ずかしくなって謝罪しながら
思わずグラスに入ったワインをグビっと飲み干した。

「どうして謝る?
 良い話だなって思ったよ、俺は。」

そう言いながら
彼は私のグラスにワインが注いでいく。

「俺は《《そういう思い》》の人達をプロデュースする役目。
 会社を立ち上げたのだって
 俺自身も”変わりたい”って思った事だからだし」

「え?」

「そんなに急に全部変わろうとしないで
 少しずつで良いんじゃない?
 応援する。
 由凪さんの新たな一歩を」

『だから一緒に頑張ろう』と
そんな風に言われてしまうと…とても弱い。