溺愛プロデュース〜年下彼の誘惑〜


「荷物は…よし。
 これで全部」

今朝7時には引っ越し業者も来て
食器類・洋服にベッドや洗濯機、冷蔵庫なんかは全て運んでもらって、あとは手に持つ荷だけ。

ここに来て
それほどの月日が経っていないのあるせいか
荷物は最初とほとんど変わらず
少し長めの長期旅行をした気分。

部屋の住み心地は良かったな。
近隣は静かで部屋は申し分ない広さ。
然さんの名義ではあったけど
自由に快適に過ごさせてもらった気がする。

クローゼットを開けて忘れ物がないか確認しながら、そんな事を考えてしまう。
居心地の良い部屋だっただけに
少々名残惜しいけど…仕方ない。

「よし、これで全部だ」

カードキーを右手に
紺色のMサイズくらいのキャリーケース1つを左手で引き、小さめのボストンバッグを肩に掛け
最後に玄関でまた同じ言葉を呟いた。

“これで終わり”
まるで自分に言い聞かせてる。
何度も何度も
振り返らないための呪文のように。

ーーーコンコン…

微かに玄関の()叩く音が
背後から聞こえてきた。