その話をするために
ここで待っていたんだ…

「とりあえず俺の方は丸く収まりそうだよ。
 裁判沙汰にはしないしね」

「そう、ですか」

「うん…」

私の一言で会話が終わってしまい
妙な緊張感が空気で伝わり
呼吸を忘れそうになる。

言わなきゃ。
頭じゃわかっているのに
こんなに心を乱されるなんてッ

「この前、俺が突き放す言い方した事を
 やっぱ気にしてるよね」

端を発して喋りかけてくれたのは然さんの方。

「俺を避けているのはわかっていたから…」

彼から先に切り出してくれたおかげで
少し気持ちが落ち着いて話せそうだ。

「避けているというより
 いきなりあんな事を言われたから
 どうしたらいいかわからなくなってしまったのが本音」

「ごめん。
 傷つけちゃったね…」


傷つけた…か。
まるで他人事な言い方。
その言葉が1番、私を傷つけるのに。

「大丈夫、もう気にしてないよ。
 然さんの気持ちはわかったし。
 それに、私も自分の気持ちに正直になれた」

「由凪さんの気持ち?」

「うん。
 私、然さんが好き」