私も真剣に考えないと。
然さんを好きって気付いてしまい
これからどうしたらいいのかわからなくなるなんて、自分ですら知らない感情だ。
この歳になったからかな。
20代半ばまでは恋する気持ちを大切にしたのに
今はフラれた相手に片思いし続ける余裕も時間もない。
報われる事なんてないのに
想えば想うほど
先の見えない孤独な戦いになる。
今更になって恋愛が難しく感じる。
「…って、口では言えるけどさ。
無理だよなぁ…」
会社の中庭の隅っこで
茂る芝生の木陰にヒッソリと置いてあるベンチに腰掛け、お昼のお弁当を食べながらボヤいてしまった。
然さんと出会って
新しい世界を見せてくれた。
新しい私を見つけてくれた。
この想いは、きっとそこから走り出したのかもしれない。
然さんが私にくれたキスも好きって言葉も
純粋にホンモノだったんだと思う。
そう…信じたい。
素直な人だから
恋愛より仕事を選んだのかもしれない。
私はそんな彼の人生を
邪魔しちゃいけない。
決めたから
もう、迷わない―――
【たとえ想っていても。終】