しっかりしなきゃと首を左右にブンブン振って
邪念を払うつもりだったのに、そうもいかなかった。
「聞かないつもりでいたけど…
放っておけなくなった」
グイっと引っ張られた腕に
引き寄せられて飛び込んだのは彼の胸。
後頭部にまわされた右手で髪をクシャっとしながら、必死に気持ちを押し殺すように彼は言う。
「あんまり煽らないで。
俺が貴女を好きになりそうだから」
と―――
「き…りゅうさん?」
何が起きているのか
どうして彼が私を抱きしめているのか
驚きと疑問でこれ以上、何も出て来ない。
「ごめん…いきなりこんな事。」
乱された髪を今度は撫でるように直すと
ホールドしていた体を離してくれた。
「う、うん
ビックリした…」
「女の涙に弱いんだよ、俺。」
「いや泣いてないけど」
確かに悲しくはなったけど
涙は流れた覚えはないよ。
「泣きたくなったらいつでも言って。
傍にいるよ」
今にも”キラン”と効果音がしそうな熱い視線で
どこかの王子様風な誘い方をされたけれど…
遠慮させてもらおう。



