桐生さんの行動に少し驚いて
言葉を発しないまま首を縦に振って答えると
ニコリと笑顔が返ってくる。

そんな表情にドキドキしているのは
こんな時に優しくされたから…?

「由凪さん、少し深呼吸して」

「へ…いき」

さっき以上に心拍数が上がるのは
たぶんこの人の心遣いのせい…だと思う。

「新多、お前も放っておいてくれ」

「まったく…然は。
 少し落ち着けって。
 顔色も悪いしロクに寝てもないんだろ?
 帰って少し休んだ方がいいぞ?」

確かに桐生さんの言う通りだ。

頭を抱えると言うより
痛みを押さえているように見えるし
何より顔が青白い。

「眠れるワケがない…
 盗作の事実確認が取れない状況で
 相手側は本格的に裁判の方向で話を進めようとしているんだ。
 更に商品の返品・返金も多い中で
 頼りにしていたスポンサーまで解約を求めてきてる。
 後ろ盾がなくなったら…全て終わりになる」

然さんが抱えている現状を初めて聞いた。
そこまで追いつめられていたなんて…

「然、それでも今のままじゃ
 お前…」