彼は私の元へと近付き
私に手を差し伸べて、そっと声を掛けてくれた。

「だから貴方に興味を持ったんです。
 俺と一緒に来ませんか?」

と――――


(社長)()の差で
気がおかしくなったのだろう。

私は小さく頷いて
差し出された彼の手を掴んでしまった。


綺咲 由凪、30歳。
仕事に人生を捧げてきたと言っても過言じゃない10年。
それが年下の若い彼の一言で一瞬にして変わるとは…


事の発端は
このハイスペック年下男の誘いからだった―――




                        【事の発端 終】