足早に先に出て行った然さんと
少ししてから私と桐生さんも店をあとにした。
街頭も消え始め
ちらほらしか歩いていない街中を駅に向かって並んで歩く私達。
「結構飲んでましたけど…大丈夫です?」
桐生さんの足取りはしっかりしているけれど
やはり少し心配になり声を掛けてみた。
「あれくらい全然平気だよ。
俺、こう見えて酒が強いの」
ニッとピースサインを向ける彼からは
確かに酔ってる感じは見受けられない。
「でもあんなに…」
「然が楽しそうだったから
つい俺も悪ふざけしちゃったんだよね」
彼はさっきまでのふざけた様子もなく真剣に話始めた。
「然が穏やかに笑っている顔、久々に見たんだよ」
「そう…なんです?」
「うん。
自分の会社を立ち上げてからは苦労ばっかでね。
軌道に乗り始めたのはまだココ最近の話。
さっきみたいに会社に呼ばれるのも
誰にも見えないところで然が必死に努力してるから。
俺は辛いときも近くにいたけど
あんな表情は見なくなったな」
私は言葉が出て来なかった。



