20話「嵐の前の水面下」




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 「仕事中だった?あぁ……よかった。今、時間いいか?……いいから、そういう事言わなくて」


 電話口の相手は、仕事が終わったばかりだというのに、軽口を叩いて剣杜を笑わせようとしたが、剣杜はそれを軽くかわした。そして、「重要な話しなんだよ」と声を潜めた。今は自分の家なので、声を低くする意味などないのだが、秘密事項を話すときは無意識にそんな事をしてしまうから不思議だ。


 「例の話だけど、上手くいったみたいで俺が映画に出ることになったよ。あぁ、知ってたか。さすが、情報が早いな」
 「…………」
 「大丈夫だ。そこら辺はうまくするよ。おまえは心配性だな。そんなことないよ」
 「…………」
 「はいはい。で、何だかもう一人の様子もおかしいんだ。俺たちに内緒で何かやってるのかもしれない。調べられるか?」
 「…………」
 「頼んだ。それじゃあ、バレないように頼むぞ。特に虹雫に関しては、やばそうならすぐに報告してほしい。あぁ、止めてもらってもいい。余計なことはしてほしくないからな」