突然、宮が虹雫の体を抱き上げたのだ。急に体が浮いたので、虹雫は咄嗟に彼の体につかまってしまう。軽々と虹雫の体を持ち上げた宮は「全然重くないよ。危ないから、俺から手を離さないで」と、笑いながら言うと、彼は虹雫を抱っこしたまま寝室へと向かい、虹雫の体をベットに下ろした。


 「さ、一緒に寝よう。これで寂しくないね」
 「宮も、でしょ?」
 「うん。そうだよ」
 「キスして欲しいな」
 「うん。いいよ。おやすみ、虹雫………」


 自分からおねだりするなんて、恥ずかしすぎるが、どうしてもしたくなり宮にそんなお願いをしてしまった。彼はからかう事もせずに、虹雫を優しく抱きしめた後、瞳を見つめゆっくりと顔を近づけてキスをしてくれる。

 こうやって自分だけを見て、抱きしめて、キスをしてもらう。そして、彼の腕の中で一緒に眠る。
 そうやって安心したかったのかもしれない。
 彼と一緒に居ても、どうしてもあの女性と一緒に歩いていた宮の姿が頭から離れないのだ。



 あの女の人は誰?
 ホテルで何をしていたの?
 宮とはどういう関係?



 そんな事を聞けるはずもなく、宮の温かさを感じながら甘い時間を酔いしれ、その不安を忘れる事でひと時の安心を手に入れ、眠るのだった。