宮は虹雫の肩を抱き寄せて、自分の方に引き寄せてくる。一気に距離が近くなり、虹雫は緊張してしまう。けれど、宮と触れ合う事が嬉しくて、自分から頭を彼の方へ倒してしまう。
 

 「今日、泊っていくだろ?」
 「え……」


 宮の嬉しい誘いに、普段だったら喜んで「泊る!」と言っていたかもしれない。けれど、今日は少しだけ迷ってしまった。すぐに仕上げてしまいたい事もある。それに、1番気がかりな事もあった。

 「………宮、疲れてない?」
 「そんな事ないよ」
 「嘘つかないの!幼馴染なんだから、すぐにわかるよ」
 「さすがだね。最近、仕事が忙しくて、なかなか寝る時間がなくてね。でも、俺は虹雫と一緒に居たほうが元気になるから泊って欲しいよ。でも、虹雫だって何だか寝不足なんじゃない?」


 宮はそういうと、虹雫の顔を手を伸ばして、親指で目の下に触れた。じんわりと彼の温かさが伝わってきて、虹雫は気恥ずかしくなってしまう。宮は「上手に隠しているけど、クマがあるのがわかるよ」と、虹雫の体調に気付いていたようだった。
 幼馴染には何も隠せないな、と改めて感じてしまう。


 「……最近ハマっている小説があって。昨日は夜更かししちゃったの」
 「虹雫は寝ないとすぐに体調崩すんだから、無理はしちゃだめだよ」
 「はーい」
 「よし。じゃあ、お風呂にも入った事だし。連行しますか」
 「え、何、って……宮!?お、重いから下ろしてッ!」