「ね、手、繋ごう?約束の忘れないために」
 「なんだよ、それ、怪しい儀式みたいじゃないか」
 「いいからいいから。宮も、ね」

 宮に向けて手を伸ばしてくる虹雫の手を拒めるはずもなく、宮は彼女の手を取った。水を抱えてきたからだろうか、彼女の手はとてもひんやりとしていた。


 三角の形をして、燃える火を囲む3人。
 あっという間だったはずなのに、その時間を宮は鮮明に覚えていた。


 「もう少しで消えちゃう。これが消えたら、忘れるんだよ。約束!」
 「じゃあ、忘れよう。虹雫がそれで笑えるなら」
 「うん。だから、ごめん今だけ泣かせて」


 きっと我慢していたのだろう虹雫の最後の言葉は震えて上手く発せられなかった。
 繋いだ手から彼女の体が震えているのがわかる。手を繋いでいるせいで、彼女の涙を拭えもしないし、抱きしめる事も出来ない。
 その代わりに宮は彼女と繋いでいる手をギュッと強く握りしめた。
 それは彼女を慰めるためでもあったし、悔しさでもあった。