その後、虹雫から制服を預かった宮は一度家へ戻り、シャワーを浴びてからクリーニング店に行き、自分の制服と虹雫のものを預けた。
 不安そうにしていた虹雫の事が心配だったので、宮は用事を済ませた後、すぐに彼女の家へと向かった。


 「虹雫?戻ったよ。………まだ、風呂か?」
 
 虹雫の家に戻ってきたが、リビングにも部屋にも彼女の姿はなかった。
 風呂場の方の光りがついたままになっており、水の音が聞こえてくるので、まだ風呂場にいるようだった。急いで帰ってきたとはいえ、1時間は経っている。女の子はお風呂は長いとはいえ、少し心配になってしまう。


 「虹雫?ごめん、少し心配で」
 「………」
 「……虹雫?」

 シャワーの音が脱衣所のドアを開けると、浴室の方からシャワーの音が聞こえてくる。
 宮の声が聞こえないのだろうか、返事がない。
 
 「虹雫ッ!」

 ドアを開ける前にもう1度大きな声で虹雫を呼ぶと「えッ!?」と、驚く声が聞こえてきた。反響のせいでと大きな声に聞こえてきた。


 「ごめん。少し長く入っていたから心配で……」
 「あ、ボーっとしてたみたい。もうあがるね」


 虹雫が何をしていたのか、この時はわからなかった。
 だが、彼女が風呂場から上がって来た時に、服の袖や首元からチラリと見えた。強く何かでこすったような赤くなった肌が目に入った時に、虹雫が何をしていたのかすぐに理解した。

 それを見た宮の心は、胸が苦しくなるが、それ以上に虹雫の気持ちを考えると、更に重たい気分になる。宮は脱衣所から出た後に、息苦しさを感じリビングの窓を開ける。
 すると、春の温かい空気が入り込んでくる。それが、現実から切り離されたような気がして、宮は大きくため息をついた。