「さっきも言ったけど、俺はこのまま終わらせるつもりはないよ。ただ、今すぐに動いて失敗するのが怖いんだよ。俺が勝手な事をして傷つくのは俺自身だったらいいが、違う。ダメージを受けるのは、虹雫なんだ」
 「そうだな。相手を知ってからでも遅くないな」
 「あぁ……」


 冷静に対応できるよう、頭を休ませる事も大切だ、という事になりその後2人も寝る事にした。
 隣りには暗闇の中でもはっきりとわかる、虹雫の寝顔があった。寝ている姿はいつもと変わらない、穏やかな表情だったのが救いだ。けれど、起きればまた辛い現実が待ち受けている。
 夢の中だけでも、笑顔でいてくれたのならば。そう願い、宮は虹雫の頭を優しく撫でた後に、ゆっくりと目を瞑った。
 けれど、宮が寝れたのは夜明け前だった。




 目を覚ますと、剣杜の姿がなかった。
 スマホに彼からメッセージが入っていた。「虹雫が熱を出したから、宮が病院に連れていくって事で親に言っておいたから、学校休め。虹雫の事を見てやってくれ。3人が一緒に休むのはまずいだろうから」そう書いてあった。
 朝が弱い彼が1番に目を覚まして、全て対応してくれた事に驚いたが、きっと剣杜も寝れなかったのだろう。それに剣杜の親は厳しい所もある。そのため、朝帰りもあまりいいと思っていないはずだ。それを考慮して朝早くに家に帰ったのかもしれない。だが、自分も思った以上に疲労していた事に驚いた。剣杜がいなくなった事に気付かないほどに熟睡していたのだ。

 隣で眠る虹雫を起こさないように布団を抜け出す。
 フローリングにカーペットという固い場所で寝ていたため、体が硬くなっているのを感じ、首や肩を回しながら起きる。時計を見ると、すでにお昼前になっていた。時間を確認すると、空腹を感じてしまう。宮は、虹雫のために風呂を準備して、あるもので簡単な料理をつくった。料理と言っても冷蔵庫にあった野菜でサラダと目玉焼き、インスタントのスープのためのお湯を沸かし、ご飯を炊いただけだ。宮は料理が得意ではなかったので仕方がない。目玉焼きが完成した頃に、虹雫の体がもぞもぞと動いたのがわかった。