怖くなった虹雫は、その後すぐに宮に電話をした。そういう流れを話してくれた。
 夢を叶えるために勇気を出して会いに行った虹雫に待った残酷な結末。今まで悩みながらも、成果を積み重ねていったものを、その男は一瞬で手に入れたのだ。しかも、道理のない人を騙し、脅すという最低な行為で。
 宮の頭の中は怒りでどうにかなりそうだった。
 自分の知らない所で、虹雫は怖い思いをしていた。しかも、何の警戒をする事もなく、話しを聞いて賛成してしまったのだ。どんなに勉強をして、天才だと言われていても、こんな危険を予知できないで、大切な人を守れないのならば、何の意味がない。
 自分の愚かさに、宮は頭痛がするほどに後悔し、自分を責めた。


 けれど、それを彼女の前で晒すわけにはいかない。
 宮は、小さく息を吐いた後に虹雫の手を取ってゆっくりと声を掛けた。


 「………虹雫、助けれ上げられなくてごめん………」
 「………宮、私、間違ってたのかな。しっかり調べてからにするべきだったのかな。悪いのは私なんだよね……」
 「なんでだよ!その男が騙したんだ。虹雫は悪くないだろっ!!」
 「剣杜………」
 「………くっそ。そいつは何て名前なんだよ。調べてあげて、俺が殴りとばして警察に突き出してやる」


 途中まで黙って話を聞いていた剣杜だったが、我慢できなかったのか怒りの声を上げた。虹雫はそんな剣杜に視線を向けたが、どうしていいのかわからずに涙を浮かべるだけだった。それでも、自分の事のように怒ってくれる存在がいるのを感じられて、強張っていた表情が少しだけ穏やかになる。けれど、話しをしていくうちに恐怖を思い出したのか繋いだ手から、彼女の体が震え始めたのに気づいた。