大丈夫、だと言う虹雫だったが、まだ顔は強張り、自分では気づいていないのかもしれないが、涙は少しずつ流れていた。


 「虹雫、何があったのか俺たちに話してくれるか?きっと、男の俺たちには話しにくいかもしれないけど………」
 「宮と剣杜以外で話しやすい人なんて他にいるわけないよ」
 「……おまえ、笑えないときに笑わなくていいんだぞ」
 「…………ごめん……」


 宮と剣杜を見るときは、口元はいつものように微笑みを表していた虹雫に剣杜はそう言うと、虹雫の瞳にじわりとまた涙が滲んだ。ベットの上に座り込んだ虹雫は、洋服の袖で涙を拭いていた。宮は、彼女にハンカチに渡すと、虹雫は「ありがとう」と受け取り、目元にそれを当てた。

 そして、少し落ち着いた後にゆっくりと口を開いた。


 「…………今日、連絡で指定された喫茶店に向かったら一人の男の人がいたの。出版社と一緒だと聞いていたから、おかしいなって思ったんだど。その男の人が私の作品を読み込んでくれていて、話が盛り上がってきて、そんな事を気にならなくなってしまったの」


 思い出すだけで辛いのか、言葉を何度も止めながらだが、今日あった事を話てくれる。
 宮と剣杜は、それを急かす事なく、相槌をうちながら彼女の話を聞いた。1つ1つの事を忘れないように、頭に叩き込みながら。