「…………」
 「虹雫ッ」
 「おまえ、どうしたんだよ……っっ!」


 虹雫は、視線だけをこちらに向ける。表情がなかった彼女の顔がぐにゃりと歪んだ。そして、宮と剣杜を見ると安心したように泣きながら微笑んだのだ。
 それを見た瞬間に、宮はすぐに虹雫に近づき、そして思いきり抱きしめた。すると、剣杜も同時に反対側から彼女を抱きしめていた。

 虹雫の体はガタガタと震えている。
 感情のない顔と、溢れる涙、震える体。虹雫の心はまた壊れてしまったのだと宮はわかった。

 そして、宮自身の体も小刻みに震えているのにようやく気づいた。
 

 自分でも想定していない強い怒りは体を震えさせ、そして憎悪に変わっていくのだと知った。