彼女に何があったのか。

 そんな事は考えたくもなかったが、この場所を泣きながら伝えてくれた時に、宮は初めて感じる怒りからの寒気と頭に血が上る感覚を味わった。これが心からの怒りなのだと、初めて知った。宮は怒ると静かになるタイプだが、剣杜は違う。表情にも態度にも口調にも表れる、素直なタイプだ。宮が「駅前のホテルにいる」と、告げると剣杜は顔を真っ赤にさせながらドンッとテーブルに拳を叩きつけ「くっそ!!」と大声で怒声を発した。


 エレベータが開くと、2人は速足で指定された部屋へと向かった。一番端の角部屋だった。宮は、コンコンッとドアを叩き、すぐにドアノブに手を掛けた。このホテルは外見は新しいが中は少し古い作りになっており、カードキーではなく昔ながらの鍵になっていた。そのため、宮はドアが開くかもしれないと思ったのだ。すると、案の定鍵は閉まってはいなかった。

 宮と剣杜は顔を見合わせた後、ドアを開けて一気に部屋の中へと駆け込んだ。


 部屋の中は、暗闇が支配していたが奥がうっすらと明るい。「虹雫ッ」と宮は名前を呼びながら部屋の奥へと向かった。
 部屋の奥は、ベットが1つと、窓際に椅子が2つ向かい合わせに置かれており、その間に小さな机があった。虹雫の姿はすぐに見つけられた。
 ベットの上座り込みで、スマホを握りしめ、呆然としながら窓を眺めていた。
 瞳からは涙がこぼれ、目も鼻も頬も赤くなっている。そして、彼女の着ていたセーラー服が、乱れていた。スカートはよれて、胸元のリボンはベットに乱雑に置かて皺になっていた。